イカの哲学


amazonより

哲学者波多野一郎が1965年に出版した「イカの哲学」の全文を収録。中沢新一がその思想を分析し、新しい平和学を提唱する。イカが人間とコミュニケーションがとれたら、という発想から、本質的な意味での世界平和を説く。

だそうです。

特攻隊やシベリヤ抑留で大変な思いをした著者がアメリカ留学中、イカ獲りのバイトをしていて、イカの実存に気付く。実存を意識することによって、イカとのコミュニケーションを意識するようになる。これを発展させて、遠い異国に住む人の実存を知ることこそが重要だと悟る。それは安易なヒューマニズムとは異なる。中沢はいつもの対称性理論(?)を用いて、これを発展させて、平和理論へと論を進める。
ま、どうでもいいですけど。この「イカの実存」という考えが、なんかWEB構築の世界に通じるなって思った。WEB構築の教科書みたいな本を見てると、大抵はきちんと調査して、ユーザーモデリングして、ペルソナ作って、エクスペリエンスフローを作って、それに基づいてWEBサイトを構築するみたいなことが書かれている。
でも、そんなこと理想論で、実現できている会社はほとんどないし、やっているとしても、ちゃんとやっている会社の極一部のプロジェクトだけだ。(ここら辺は詳しいので、間違いがない)
なにより前段にあるべき、調査をしてからのユーザーモデリングが全くできていない。完全に妄想で形だけのペルソナを作っているだけだ。妄想では実存に気付くことはできない。波多野がイカの実存に気付いたのは、イカと共に長い時間を過ごしたからだ。ユーザーのことを知ったフリをするだけでは、ユーザーの実存に気付くことができない。実存に気付くには、実際に触れあって、よく理解することが重要だ。そうすることでユーザーと本当の創造的/想像的コミュニケーションが取ることができる。
それは安易なユーザー中心デザインなんかじゃない。それこそが本当の意味でのユーザーエクスペリエンスデザインだ。ユーザーの経験を無視したデザインはデザイナーの思い上がりでしかない。ユーザーの経験をデザインするには何より、ユーザーの実存を知らなければならない。
なぜ創造的/想像的コミュニケーションという言葉を使ったかというと、ユーザーは解決策を出すことができないからだ。解決策を出すのはデザイナーであり、マーケターである。デザイナーとユーザーの想像上の会話こそ、WEB構築に最も求められるものだ。創造的/想像的コミュニケーションの基になるのが、ユーザーの実存だ。それは単純なユーザーサーベイだけでは見つからない。
もちろんサーベイも重要だが。「観察」が一番のキーだと思う。実際に話を聞くのもいいんだけど、実際にコミュニケーションを取ると、ユーザーの社会を大きく崩す。ユーザーの社会に深く入って、観察する。そして実存を感じる。
人間がコミュニケーションを取る相手は人間だけではない。イカもそうだし、機械だってそうだ。重要なのは人と会話しようが、イカと会話しようが、彼は想像界を生きているということだ。そういう意味では人もイカも同じだ。
同じじゃないという主張がヒューマニズムでしかない。知った気になって、自分の主張を強制しているだけだ。ネットの奥にいる人はイカだ。イカの実存に気付くには、イカと本当に向き合う必要がある。ユーザーとの良い関係を築くWEBサイトを作るには、このことが一番重要だなと思う。

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