クロスチャネルメジャメントの考え方1 – 基本コンセプト


セッションからユーザーへ

前回のエントリの最後に、今後1年間でWebアナリティクス周りにおいて、大きな展開があると書きました。それは、「セッションからユーザーへ」という転回です。

これまで、Webアナリティクスは「セッション」を中心に行われてきました。外部サイト/広告からの流入数も、CVRも基本的には「セッション数」を母数にして算出されます。1回のセッションにおいて、ユーザーがどこから来て、どのように回遊して、コンバージョンへと至ったのか、を分析することがWebアナリティクスの使命でした。なぜ、「ユーザー」ではなく「セッション」が分析の中心となっていのかという理由は、いろいろ考えられますが、大きな所では「解析ツールの技術的要因」と「ユーザーレベル測定の必要性の低さ」が挙げられるでしょう。

しかし、ここ一年ほどの間で、状況は大きく変わってきています。まず、ツールの問題ですが、これはツールに大きな進化があります。Googleアナリティクスはマルチファネルレポートをリリースして、セッションを超えたアトリビューション分析を可能としました。おそらく、ユーザーレベルでの解析は今後どんどん進めていくでしょう。他のツールも同様にユーザーレベルでの分析が拡充していくと思います。

次に必要性の問題ですが、これも状況は大きく変わっています。一つは正確な広告効果測定の必要性です。これまでのCVR, CPAを中心とした分析では刈り取りに適した施策のみ評価されてしまい、それ以外の施策が過小評価されてしまいました。 広告側からの要求も大きいと思いますが、各施策の目的に合わせた分析が求められています。

ユーザーレベルでの分析の必要性という点では、さらに重要なことがあります。 それは複数のチャネル、デバイスを横断した施策がより重要となっているという点です。今や多くのユーザーはスマートフォンを使っています。Facebook、Twitterなどのソーシャルメディアも無視することはできません。今、ビジネスに求められていることは、チャネルを横断したマーケティング施策を実行することです。当然、効果測定も同時に求められます。後で説明することになると思いますが、チャネルを横断するということは、セッションを横断することを意味します。

そこで、本エントリでは、クロスチャネル/クロスセッション時代の効果測定の方法論についての試論をしようと思います。まず、今回は基本コンセプトについて考えてみます。

 

ユーザー行動:クロスチャネルなユーザーの行動

Pervasive Information Architectureという本があります。これはクロスチャネル時代の情報設計について書かれたエポックメイキングな本です。多くのIA系の良書と同様に 哲学的な表現や独特の語彙があるので、全ての人が原書を読むべきとは言いませんが、翻訳本が出てしかるべき本なので、翻訳が出たら、是非一読をお勧めします。

この本の要点を簡単に言うと、チャネルを横断したUX設計、情報設計をしなくてはならない、という点だと思います。これは単なる「クロスメディア」、「クロスデバイス」とは違います。全てのチャネルで一貫した情報構造維持し、最適なコミュニケーションをとることで初めて適切なユーザーエクスペリエンスを提供できるということです。「クロスチャネル」、「クロスメディア」等の違いについては著者らによる下記記事を参照してください。
http://andrearesmini.com/blog/what-is-cross-channel

作り手が望む望まないに関わらず、ユーザーは既に多くのチャネルを横断した行動を取っています。制作側はPCサイトだけ作っていれば良いという時代は終わりました。 あらゆるチャネルを横断したマーケティング施策をしなくてはならない状況になっています。そして、それらの効果測定も当然必要になっていきます。チャネルを跨いだユーザー行動をできるだけ正確に測定する必要があります。

「チャネルを横断すること」、それは「セッションを横断すること」を意味します。次にセッションを横断するユーザー行動を見ていきます。

 

ユーザー行動:クロスセッションなユーザーの行動

ユーザーがWebサイトを利用することは1回限りではありません。最初リスティング広告からサイトへ来て、2日後に自然検索からサイトへ来て会員登録し、その3日後にメルマガ経由でサイトへ来て、コンバージョンする。と、いった行動は普通にあります。

この行動を図式化すると、

リスティング → 自然検索 → メルマガ → CV

となります。

これをセッションベースだけで評価してしまうと、「メルマガ」のみCVでカウントされてしまい、「リスティング」、「自然検索」は評価の対象外となってしまいます。ちゃんと、ファーストタッチメディアとして機能した広告や、「アシスト」した広告も評価してあげましょう。。。というのが、よくある安易なアトリビューション分析の方法です。

これはこれで重要なことです。しかし、「クロスチャネルメジャメント」のアプローチは見方が少し異なります。アトリビューション分析では、「広告」の効果測定という文脈で語られがちですが、「クロスチャネルメジャメント」はあくまでも「ユーザーエクスペリエンスの評価」です。「広告としてCVに貢献したかどうか」ではなく、該当するメディアは「期待したエクスペリエンスを与えることができたのかどうか」を評価します。広告であろうと、ソーシャルメディアであろうと、自社サイトであろうと、すべて意図した「ユーザーエクスペリエンスを提供するための施策」として捉えます(メディアであるとも限りません)。つまり、「あらゆる施策は態度変容の場である」と考えます。

例えば、リスティング広告の目的が「商品を認知してもらい、サイトへと誘導する」のであれば、

「リスティング → 自然検索 → メルマガ → CV」

という行動はリスティング広告が成功したということを意味します。「リスティング広告を閲覧することで、態度変容が起こり、リンクをクリックしてもらった。そして、最終的にはコンバージョンまで到達した。」と考えることができます。これは、リスティング広告の目的と合致します。

評価する対象は、Web上での施策に限定されません。テレビCMや新聞・雑誌広告、店舗でのPOPまで全てを含めたユーザーエクスペリエンスを包括的に設計し、評価していきます。
(クロスチャネル・クロスセッション時代のユーザー行動については、別のエントリで詳しく説明します。)

 

 

自社サイトを測定の中心にする

「クロスチャネル」と「クロスセッション」は別に繋げて考える必要はないのでは?と思う人もいるかもしれません。なぜ、「チャネルを横断することは、セッションを横断することを意味する」のか。それは、自社サイトを「ハブ」として考えるからです。できうる限り、どの施策からも「自社サイト」を経由させるような施策にします。それには、いくつか理由があります。

自社サイトは「刈り取りの場」である

多くの企業にとって、自社サイトは刈り取りの場となっています。ECサイトでは、自社サイトで何かを販売しています。リード獲得系のサイトでは、自社サイトでリードを集めています。メディア系の企業では自社サイトを見てもらうことで、広告収入を得ています。つまり、施策全体での「コンバージョン」が起こる場所は自社サイトであることが多いということです。逆に、施策全体でのコンバージョンを自社サイト内でどうしても定義できない場合は、この「クロスチャネルメジャメント」はうまく機能しません。

自社サイトでは自由に表現することができる

予算や人的リソース、システム上の制限などもありますが、自社サイトでは他のメディアと比較して、圧倒的に高い自由度で施策を打つことができると言えます。もし、サイトに連れてくることさえできれば、あらゆる方法を使って「態度変容」を促すことができます。これはバナー広告、リスティング広告、ソーシャルメディア上での活動では不可能です。これらの媒体では、大きな表現に大きな制限がかけられてしまいます。あらゆるメディアから、態度変容を促すために自社サイトを経由させることは、多くの場合、適切な方法となります。

自社サイトでは自由に計測ができる

そして、計測という文脈で何より重要なことに、自社サイト上ではアクセス解析ツールを中心として、様々な計測が可能となります。各種広告やソーシャルメディア上でも効果測定は可能ですが、やはり計測に制限がつきまといます。自社サイトであれば、技術的・プライバシー的に可能なことであれば、あらゆる計測が可能です。当然、背後にあるCRMや売上データなど、様々なデータとの統合も可能となります。

(自社サイトを中心とした計測方法は別エントリで詳しく説明します)

* ここでいう「自社サイト」とはPC向けのサイトである必要はありません。スマホ向け・フィーチャーホン向けサイトも当然含まれます(フィーチャーホン向けサイトは技術的な制限が大きいので実際は計測が難しいと考えられます)

つまり、「クロスチャネルメジャメント」の方法を簡潔に言うと、

チャネルを横断した施策から自社サイトへとユーザーを集め、セッションを横断して評価することで、マーケティング施策全体のユーザーエクスペリエンスを評価しようとする方法

です。

クロスチャネルメジャメントを図式化すると下のような図になります。

上のグレーのパートは、ユーザーの検討フェーズです。ここでは、(購入)「未検討」から「購買」、「ファン」へと進んでいくように定義しています。

下の「接触チャネル」のパートで、各検討フェーズに即した施策を定義しています。刈り取りの場が自社サイトであるので、どの施策も全て最終的に自社サイトへと誘導します。初期の段階で自社サイトへ誘導する媒体、刈り取りのフェーズで自社サイトへ誘導する媒体があります。逆に自社サイトから誘導する媒体(上の図ではソーシャルメディア)もあります(当然、最終的には自社サイトへと誘導されます)。このようにして、自社サイトを「ハブ」として、各施策をユーザーフェーズごとに定義していきます。

そして、自社サイトへの「行き来」と、「コンバージョン」を全て計測します。これが、クロスチャネルメジャメントの基本的な考え方です。

もう一度、まとめると、

クロスチャネルメジャメントとは、

「チャネルを横断した施策から自社サイトへとユーザーを集め、セッションを横断して評価することで、マーケティング施策全体のユーザーエクスペリエンスを評価しようとする方法」

であり、

具体的には、

「各施策から自社サイトへの流入、自社サイトから各施策への流出を記録し、セッションを横断してトラックする計測手法」

を意味します。

次のエントリから、より具体的な方法について考えます。まず次回は「ユーザー行動」についてさらに詳細に検討します。その次のエントリで、「自社サイトを中心とした計測方法」について詳細を検討します。

クロスチャネルメジャメントの考え方1 – 基本コンセプト
クロスチャネルメジャメントの考え方2 – ユーザー行動
クロスチャネルメジャメントの考え方3 – 測定プラットフォームとしての自社サイト

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