クロスチャネルメジャメントの考え方2 – ユーザー行動


前回のエントリ:
クロスチャネルメジャメントの考え方1 – 基本コンセプト

前回のエントリで、「クロスチャネルメジャメントの基本コンセプト」について説明しました。

クロスチャネルメジャメントとは、
「チャネルを横断した施策から自社サイトへとユーザーを集め、セッションを横断して評価することで、マーケティング施策全体のユーザーエクスペリエンスを評価しようとする方法」
であり、具体的には、
「各施策から自社サイトへの流入、自社サイトから各施策への流出を記録し、セッションを横断してトラックする計測手法」
です。
クロスチャネルメジャメントは、ユーザーエクスペリエンスを評価するためのものであるため、まずはユーザー行動を定義する必要があります。今回は、クロスチャネル時代のユーザー行動について、一度整理します。

 

情報収集・探索活動の統合的モデル

ユーザー行動を理解し、施策へと繋げていくためには、ユーザー行動をモデル化することが助けとなります。古くからあるDAGMARやAIDMA、比較的最近のAISASやSIPSなどの消費行動モデルも、ユーザー行動をモデル化したものと考えられます。これらの消費行動モデルを使っても良いのですが、まずは別の視点・もっと高いところから見る視点で考えてみます。
Pervasive Information Architectureでも取り上げられていた「情報収集・探索活動の統合的モデル」(Integrated Model of Information Seeking and Searching)というモデルがあります。これはユーザーの情報収集方法を「Directed(指向的)/Un-directed(非指向的)」、「Active(積極的)/Passive(受動的)」に分けて考え、それらの組み合わせで、ユーザーの情報収集活動を分類しようとするものです。図として表現すると、下のようになります。

Integrated Model of Information Seeking and Searching
http://ptarpp2.uitm.edu.my/silibus/TowardAnIntegratedModel.pdf

まず第1象限(Active/Direct)の「Searching」から見ていきます。これは自ら積極的・自発的に情報を収集し、探す対象のものがおおよそわかっている状態です。検索エンジン上での「検索」や、ECページ、企業ページなどでの情報収集の多くは、「Searching」が当てはまるでしょう。
次に第2象限「Browsing」(Active/Un-directed)ですが、これは自発的に情報を収集しているが、特に探しているものはない状態です。ニュースサイトの閲覧などはこれに当てはまります。
第3象限「Monitoring」(Passive/Directed)は、受動的に何らかの決まった情報を収集している状態です。メールマガジンの購読や、RSSの購読などは、これに含まれます。
最後に第4象限の「Being Aware」(Passive/Un-directed)です。これは、とくに何らかの情報を探してもいない状態で、情報が「入ってくる」状態を指します。友人との会話での話題や、ソーシャルメディア上での会話が、これに含まれると思います。
「Integrated Model of Information Seeking and Searching」の論文によると、最後の「Being Aware」から得る情報が全情報の80%を占めると言われています。これは非常にショッキングな結果です。なぜなら、多くのUXデザイナー(そしてアナリストも!)は「Searching」の行動しか考えていないからです。
よくよく考えてみると、Being Awareから得る情報が多いというのは当然といえば当然で、Web上でさえ、「Browsing」や「Monitoring」で収集する情報のほうが、「Searching」で収集する情報よりも多いことは明白です。ユーザーに情報を届けるという視点で考えると、「Searching」だけを考えていては、全然足りません。4つの象限全てに向けて、最適なコミュニケーションを図らなければなりません。

 

情報収集モデルの適用

この4つの象限による情報収集モデルを、前回作成したクロスチャネルメジャメントの図式に当てはめると下記のようになります。

ユーザーは未検討の状態から、TV広告・口コミ(Being Aware)や、ニュースサイトなどのバナー広告(Browsing)で気づき、「検討フェーズ」に入ります。検索エンジンや比較サイト等で、情報を収集しながら、企業サイトへと訪れ、商品の評価をし、購入します。購入後はソーシャルメディア上で、商品の評価について語り合います(Monitoring)。そのソーシャルメディア上での話題を見た未検討層の人が、その商品の良さに気づきます(Being Aware)。このようにして、ユーザーを取り巻く情報と、ユーザーの検討状況を含めて、ユーザー行動をモデル化します。
当然、全てこのユーザー行動モデルが当てはまるわけではありません。普通にAIDMAやAISASで考えても良いと思います。重要なのは、ユーザーの「検討フェーズ」と「接触メディア(マーケティング施策)」を結びつけて定義することです。これができると、そのメディアで「何をすべきか」が明確になります。

 

クロスチャネルメジャメントにおける顧客育成

ユーザーの検討フェーズと、接触メディア・マーケティング施策を結びつけて考えるという方法は、「顧客を育成する」という考えと一致します。「ナーチャリング」と言ってもいいと思います。「Searching」以外の情報収集は(Being Aware、Browsing、Monitoring)は潜在層に向けたアプローチと考えられます。「Searching」のみニーズが顕在化したユーザーへのアプローチです。これらの情報収集段階に向けたアプローチは、潜在層に向けて何らかの施策を行い、ユーザーを検討フェーズに乗せ、ユーザーを購入へと育成する方法と言えます。
B2B向けマーケティングの文脈で語られることの多い「リードナーチャリング」と近いと考えてもいいと思います。ユーザーの興味や検討フェーズに合わせたコミュニケーションをとって、ユーザーを育成(=態度変容)し、ユーザーを購入へと近づけていくという方法が、このユーザー行動モデルの本質です。

 

Searchingにおける段階

上で、ユーザーの情報収集活動は、「Being Aware」が最も大きく、「Searching」が最も少ないと書きました。それでもやはり、企業にとっては、「Searching」が最も重要な情報収集活動です。なぜなら、「Searching」のユーザーは、既に検討フェーズへと乗ったユーザーだからです。「確度」という観点では、他のユーザーよりも圧倒的に高い確度をもったユーザーだと言えます。検討フェーズへと乗っていただいたユーザーに対して、適切なコミュニケーションを取ることは必須であり、他の施策が様々な都合上、実施できないといしても、これらのユーザーに対するコミュニケーションは実行せねばなりません。
「Searching」の中でも、いくつかの検討フェーズがあります。例えば、「検討中」の段階、「決定後の確認」の段階などが考えられます。これは製品の購買行動モデルによって大きく変わってくるでしょう。ただ、あまり細かくしすぎないことがポイントです。細かく考えようとすると、いくらでも細かく考えられますが、一つ一つのパイが小さくなってしまったり、細かすぎて施策が考えにくくなってしまったり、計測しようにも区別して計測できなくなってしまいます。できるだけシンプルに考えることが重要です。

 

KGIとKPI

ここまで来れば、各施策ごとの目的がはっきりします。どの施策がどの役割を担っており、その施策が果たすべき役割は何なのかが、明確になっているはずです。1つ付け加えるとしたら、それぞれの施策の目的に、「自社サイトを極力絡めるようにする」ということです。当然、優先すべきはユーザーエクスペリエンスですが、自社サイトが計測の中心になっている以上、自社サイトを絡めない限り、計測することができません。プライバシーの問題もあるため、おそらくどんなに技術が進化しても、包括的にデータを取得するには、これしか方法がないと思っています。
それぞれの施策の目的を明確化したあとは、その目的を評価する指標を考えます。基本的な考えは、KGI/KPIの設定に即して考えます。
まずは、施策全体としての評価を考えてみましょう。上記図式の最終的なゴールは「Action」と記されている「コンバージョン」です。全てはコンバージョンを最大化するために、行われている施策です。つまり、施策全体での最終的な評価指標は当然「コンバージョン」となります(それは数であったり、金額であったり、利益高であったりします)。
そして、それぞれの施策はコンバージョン最大化のために行われているため、どの施策も最終的なゴールは自社サイト上でのコンバージョンと結びついていないといけません。よって、すべての評価は「コンバージョン」という軸で共通に評価することができます。
ただ、これはセッションレベルで評価することはできません。なぜなら、それぞれのメディアで役割が異なるからです。「Browsing」や「Being Aware」では、潜在層にアピールすることを目的としているため、検討フェーズが低い人をサイトへ連れてきています。逆に、検討フェーズの低い人を連れてこれていなければ失敗です。よって、これらの施策をセッションベースのCVRやCPAで評価しようとすると、不当に評価が低くなってしまいます。接触履歴を記録して、それぞれの役割に即して評価する必要があります。「認知」が重要な役割のメディアであれば、「ファーストタッチメディア」として機能したかどうかを評価する必要があります。初回訪問に役立ち、最終的にコンバージョンまで到達したのかをトラックして、評価します。この「コンバージョン」を中心とした各施策の評価が、各施策別での「KGI (Key Goal Indicator)」となります。
次に各施策別での評価方法を考えます。それぞれの施策の最終的なゴールは、自社サイト上でのコンバージョンですが、それを達成する手段(=成功要因)は様々です。前回のエントリで書いたように各チャネルは、それぞれ「態度変容の場」です。各施策内で「態度変容が起こっているのかどうか」を評価する必要があります。
バナー広告であれば、「製品・サイトを認知してもらって、クリックしたいと思ってもらう」ことが「達成すべき態度変容」だとすると、まずはクリックしてもらわなくてはならないため、クリック数やCTRが重要な指標となります。これらの各施策の手段を評価する指標を「KPI(Key Performance Indicator)」とし、定期的に評価していきます。

マーケティング施策全体、各施策個別でのユーザー行動が定義でき、目的を設定することができました。その目的に即したKGI/KPIも設定することができました。それでは実際に次回のエントリで、どのようにして、データを取得していくのかを見ていくことにします。

クロスチャネルメジャメントの考え方1 – 基本コンセプト
クロスチャネルメジャメントの考え方2 – ユーザー行動
クロスチャネルメジャメントの考え方3 – 測定プラットフォームとしての自社サイト

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