クロスチャネルメジャメントの考え方3 – 測定プラットフォームとしての自社サイト


 

クロスチャネルメジャメントの考え方1 – 基本コンセプト
クロスチャネルメジャメントの考え方2 – ユーザー行動

 

前回、クロスチャネル時代のユーザー行動について見ていき、各施策ごとのKGI/KPI定義の方法まで進みました。今回は、実際にデータを取得する方法を考えます。

各施策のKPIについては、基本的に各施策内の効果測定システムを利用してデータを取得します。それについては、特にここでは説明しません。今回は、各施策のKGIであるコンバージョンへの貢献をどのようにして取得するのかを中心に説明します。「コンバージョンへの貢献」は基本的に自社サイト上での測定プラットフォームで行います。この測定プラットフォームは大きく分けると2つの計測システムと、アクセスログ解析ツールを連動させたものとなります。

 

接触履歴を取得するシステム

1つは各メディアとの接触履歴を取得するシステムとログ解析ツールを連動させることです。もちろん将来的には、ログ解析ツールにビルトインされるようになる可能性もあります。ただ、現状で満足のいく接触履歴を取得できるツールはないので、計測タグのカスタマイズという方法で接触履歴を取得するシステムを構築する必要があります。具体的にはJavaScriptとcookieを用いて、データを保存・収集し、アクセスログ解析サーバーへとデータを送るというプログラムを開発します。

あえて、「接触履歴」という言葉を使ったことには理由があります。これは単なる流入元の分析ではないからです。別の言い方をすると、「流入元」である必要すらありません。マーケティング施策はサイトの「内部」にある場合もあり、また、サイトから誘導する「先」にある場合もあります。それらも含めた各施策とユーザーとの「接触」を履歴として取得していきます。

利用できるデータとしては下記の4つのパターンが考えられます。

  • リファラー情報
  • URLパラメータ(?~)
  • リンククリック
  • URL表示

当然、サイト内での滞在時間やPVなど、あらゆるイベントを接触のトリガーとして考える事もできます。ただ、通常は上記の4つで十分でしょう。

しかし、大きな問題があります。それは、「ログ解析ツールとどのようにして連動させるか」です。基本的には自由に設定できる変数(Googleアナリティクスでいえば、カスタム変数)に接触履歴データを入れることが、もっとも簡単な方法でしょう。ただし、これらの変数は、どのツールも結構厳しい制限があります。Googleアナリティクスはカスタム変数が5つに限定される上に、1個あたり64byteという厳しすぎる制限があります。こういった制限がある以上、すべてのデータを記録しておくことは、ほとんど不可能なため、何らかの犠牲は必要です。何を記録して、何を記録せずに妥協するかは、ユーザー行動の整理ができていれば、決めることはできると思います。例えば、認知系の施策を評価するために、ファーストタッチメディアだけ記録しておくなどが考えられるでしょう。この問題はツールの進化の過程における過渡期的な問題なはずで、おそらくわざわざJavaScriptで開発しなくても、ツールに標準で付いてくる時代がやってくると思います。

ポイントとしては、

「各チャネルの目的に即した形で、各チャネルとの接触を記録すること」

にあります。この接触履歴データと、最終的なコンバージョンのデータを結びつけて、各施策のコンバージョンへの貢献度を評価していきます。

 

オンサイト・サーベイ

2つ目の計測システムは「オンサイト・サーベイ」、いわゆるサイト内アンケートです。サイト内アンケートと、アクセスログ解析ツールを連動させます。

アンケートを利用する目的は3つあります。一つ一つ見ていきます。

検討フェーズの測定

クロスチャネルメジャメントでは、各施策から自社サイトへと誘導することが必要なアプローチとなります。そこでは、それぞれの施策から「どのようなユーザーを連れてこれたのか」が重要となります。下の図にもあるように、検討初期のフェーズにいるユーザーを連れてくるためのメディアと、検討後期のフェーズにいるユーザーを連れてくるためのメディアは明確に異なるように定義しています。


例えば、購買までの検討期間が長い商品で、バナー広告を「認知」のための媒体として定義した場合、バナー広告から来たユーザーの多くが商品を購入することが決定した後であれば、そのバナー広告は「認知」という意味では失敗です。バナー広告のランディング先ページも初めて商品を知った人向けに作ったページであるため、その施策も無意味になってしまいます。

「それぞれの施策が連れてきたユーザーが、検討フェーズのどの段階にいるユーザーなのかを測定すること」

はクロスチャネルメジャメントの重要な要素の1つです。

態度変容の測定

クロスチャネルメジャメントでは、全てのチャネルは「態度変容の場」であると考えます。そういう意味では、全てのメディアは別々の役割を持ったフラットな存在であり、当然、自社サイトも「態度変容の場」の1つです。しかし、自社サイトでは、「Searching」のフェーズにいる顕在化したユーザーに対して施策を行う場であり、態度変容させることの重要性が非常に高い場であります。ユーザーの「行動」で測れる態度変容だけではなく、ユーザーの「意識」上での態度変容まで測ることも重要です。つまり、自社サイトを閲覧してもらうことによって、検討フェーズが上がったのかどうかを、直接ユーザーに尋ねてしまおうというアプローチ方法です。

意識の変容を測定するためには、ある程度ユーザーにサイトを閲覧してもらわなくてはいけません。そのため、サイトへ来た瞬間にアンケートを出すというアプローチでは成立しません。何ページかページを閲覧してもらった後か、数分サイトに滞在してもらったあとに、アンケートを出すという仕組みにする必要があります。

接触履歴の補足

接触履歴は前述のように、基本的にはcookieベースでデータを取得します。しかし、現実的な問題として、すべての接触履歴をトラックすることは不可能です。まず問題となってくるのが、異なるデバイス・異なるブラウザを使った場合でのトラックです。技術的問題、プライバシー上の問題の両面で、デバイス・ブラウザを超えたトラッキングは実質的に不可能です。デバイス・ブラウザを超えて、同じユーザーのトラックを可能にするためには、一度何らかの登録を行なってもらって、会員IDという別の仕組みで紐付けなくてはいけません。基本的にオープンなスペースである多くの自社サイトにとって、全てのユーザーに対して一意のIDを付与することは不可能です。

もう1つ。下記の図を見てみてください。

さりげなく「リアル広告」と「口コミ」に向けて、「測定」の矢印が伸びています。cookieをベースにしたトラックであれば、これらの施策に接触したユーザーが、どれだけサイトに来ていて、コンバージョンまで至ったのかを測定することは、ほぼ不可能です。

では、どうすれば良いか?実際に聞いてみるのが一番です。普通にアンケートで、サイト閲覧前にどの施策に接触したのかを聞いてみれば、問題は全て解決します。当然全てのトラッキングができるわけではないのですが、多くの場合、ユーザーは印象に強く残ったメディアについては、きちんと回答してくれます。

 

オンサイト・サーベイ利用上の課題

オンサイト・サーベイは非常に便利な方法ですが、大きな課題がいくつもあります。

まず、1つ目はサンプルの代表性の問題です。どんなにうまい方法で、アンケートを出すようにしたとしても、アンケートに答えてくれるユーザーが、すべてのユーザーの代表性を保証しているのかどうかという疑問は残ります。極力、公平な形でアンケート画面を出し、回答の負担を少なくすることである程度は、代表性の問題を小さくすることはできます。

2つ目は、1つ目と関連しますが、サンプル数確保の問題です。十分なサンプル数が確保できない場合、サンプルの代表性を担保することはできません。これまでの経験上、アンケートに回答してくれるユーザーは多くて数パーセント程度です。仮に1%だとすると、1,000件のサンプルを集めるためには、100,000の訪問がなければいけません。これだけのユーザーを集めることのできるサイトではないと、アンケートを実施しても意味があまりないでしょう。

3つ目は結果の正確性の問題です。アクセスログ解析によるデータは、有無を言わせない実際にユーザーが取った「行動」の結果です。計測上のエラーは多々起こりますが、基本的には批判のしようがないデータです。しかし、アンケートで取得するデータは、ユーザーが自分で選択した結果です。調査票の設計次第で、ある程度回答をコントロールすることもできます。当然、嘘をつくユーザーも少なからずいます。正確性という点では、行動データには全くかないません。

4つ目はユーザーエクスペリエンス上の問題です。サイトを閲覧している最中にアンケートが出てくることは、少なくとも愉快な経験ではありません。

これらの問題に対する根本的な解決策はないと思いますが、弊害を減らす方法はいくらでもあります。

  • アンケートの出し方を工夫すること
  • 回答の負荷を抑えること
  • サンプル数をできるだけ多く確保すること
  • 調査設計をしっかりすること

などの工夫によって、できるだけアンケートの正確性を確保する努力が必要です。

 

測定プラットフォームとしての自社サイト

まとめると、

自社サイト上で、「接触履歴を取る仕組み」と「アンケートを実施する仕組み」を導入し、それらをアクセス解析ツールと連動させて計測すること

が、クロスチャネルメジャメントの計測ストラテジーのキモとなる部分です。

接触履歴や、アンケートでの回答結果と、コンバージョンを結びつけて、各施策の評価を行います。当然、接触履歴とアンケートの回答結果の紐付けによるデータも重要です。また、アンケートでの回答結果(例えば検討フェーズ)ごとで、どのコンテンツが閲覧されているのかを見ることは今後の改善に大きく役立ちます。

絵空事のように聞こえるかもしれませんが、実は導入実績はいくつもあります。しかし、実際にやってみようとすると、アクセス解析ツール側の都合による障害が想像以上に大きく、かなり無理をした形にせざるをえません。JavaScriptを中心としたWebのテクノロジーと、アクセス解析ツールの仕様を深く理解していないとインプリは難しいでしょう。

以上、かなり長くなりましたが、クロスチャネルメジャメントの考え方について説明してきました。最近、アトリビューション分析を見聞きすることは増えましたが、これは単なるアトリビューション分析とは違います。これまで行なってきていたKGI/KPI設定のフレームワークを拡大したものであって、Webを中心とした施策の効果測定の方法論です。

僕はアトリビューション分析の多くは、広告業界からのポジショニングトークだと思っていますが、このクロスチャネルメジャメントもUXD業界からのポジショニングトークであることには違いがありません(UXDという業界があればですけど)。どうにかして広告の効果を証明しようとする安易なアトリビューション分析と、施策全体でのユーザーエクスペリエンスを計測しようとするクロスチャネルメジャメントは全くことなるものです。(あえて、「安易な」という言葉を使っています。思慮深く考えられたアトリビューション分析は具体的な方法論はどうであれ、基本的な考えはクロスチャネルメジャメントと同じになると思っています)。

今回は、あえて触れていませんですが、探索的なリサーチのアプローチ方法も当然あります。今回、取りあえげた方法は、あくまでも実際に打った施策にたいする効果検証です。効果測定をしながら、いくつも施策を打ち、改善を繰り返していくことで、最適なマーケティング方法に近づけていくという方法です。ユーザーの行動を深く分析することで、探索的に最適なコミュニケーション方法をデータから探していこうという方法とは全く異なります。この探索的なアプローチでは、アトリビューション分析で取り上げられている方法論がよくフィットすると思います。(*これまでの経験上、探索的に何かを探そうとしても何も見つからない、っていうことの方が多かったりもしますが。。。それより、定性調査をやったほうが。。。)

クロスチャネルメジャメントの考え方1 – 基本コンセプト
クロスチャネルメジャメントの考え方2 – ユーザー行動
クロスチャネルメジャメントの考え方3 – 測定プラットフォームとしての自社サイト

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