なぜそのECサイトでモノを買うのか


ECサイトで購入する理由

なぜ人はECサイトでモノを買うのか?ここでは、あえてECサイトである必要もありません。なぜ、通信販売でモノを買うのか?
その理由は単純です。以前、アンケートをとったことがありますが、以下の3つに集約されました。

  • 価格が安いから
  • そこで買った方が便利だから
  • そこでしか買えないから

この中で最も多い意見は圧倒的に「価格が安いから」です。大部分のユーザーは流通の仕組みを(中途半端に)理解していて、ECサイトでは、人件費・店舗の地代・在庫管理などでコストカットできるとわかっています。そのため、ECサイトでは価格が安いことを強く期待します。その上、価格.comのような価格比較サイトまでチェックして、最安値のサイトでモノを購入しようとします。逆に言うと、他より価格が安くないとユーザーは商品を購入しません。それくらい、ECサイトにおいては、価格はシビアです。
次の理由「そこで買った方が便利だから」もわかりやすいと思います。例えば、低価格の大型家具などは、実際モノをみる必要もないし、店舗に行ったところで、どうせ配送をお願いしないと自宅まで持って帰ることができません。このような商品はECサイトでの販売(通信販売)に向いており、製品力で勝負することができます。
3つ目の理由は「そこでしか買えないから」です。これは純粋に流通チャネルがECでしかない場合です。どこの店舗でも取り扱っていない商品、Web限定の商品、など「ここでしか買えない」というプレミア感が重要です。これは純粋に製品力の勝負となります。魅力のある製品であれば、多少高くても購買してもらうことができるでしょう。

 

この3つで勝負できない場合はどうすれば良いのか

ECサイトで売り上げをあげるためには、この3つの理由のどれかに応えることが一番の方法です。「価格を安くする」、「ECの方が便利な製品を取り扱う」、「このサイトでしか買えない商品を取り扱う」。
しかし、この3つの戦術を採用できる場合の方が稀です。「価格を安く」しようとすると、利益を大きく圧迫します。価格.comで最安値常連の店舗が倒産したことは記憶に新しいです。また、その他小売店や卸売店との関係上、なかなか値引きできないことも多いです。このことは、ユーザーは理解してくれません。「EC向きの製品をを取り扱う」にしても、そもそもそのような商品は取り扱っていない場合も多いです。また、仮に取り扱っていたとしても、競合が同じ商品を取り扱っていれば、すぐに価格競争となります。3つ目の「ここでしか買えない商品を取り扱う」にしても、その商品自体に魅力がなければ購入してもらえません。そんな商品を開発できるのであれば、誰も苦労しません。
では、どうすれば売り上げをあげることができるのか。ユーザーにアンケートで聞いても答えは出てきません。ユーザーの行動を考えてみましょう。
一つ考えられるのが、「ついで買い」です。ECサイトでは何らかの商品を買う「ついでに」、何か別の商品を買うことがよくあります。デジタルカメラを買うついでに、SDカードや液晶保護シールを買うなど、よくあります。これにはレコメンデーションエンジンが大きな力を発揮します。
しかし、「ついで買い」にしても、「ついで」になる前の商品を購入してもらわなくてはいけません。そもそも何らかの商品を購入する意思がある人しか、「ついで」で商品を購入してもらうことはできません。
次に考えられるのは、ユーザー行動の「シェア」を独占することです。大部分のユーザーは検索結果の1ページ目しか閲覧しません。3ページ目に表示されるサイトに最安値の商品があったとしても、ユーザーは気づきません。1ページ目に表示される数件のECサイトの中でもっともバリューを感じられるサイトで商品を購入して行きます。仮に検索結果ページの1ページ目をすべて自社のECサイトで占有してしまえば、ユーザーの選択の余地はありません。「そこでしか買えない」状況を作りあげることができます(実際は当然無理ですが)。
この方法は強力です。うまくやれば、効果を発揮するでしょう。ただ、少し本質的でないような気もします。他に方法はあるのでしょうか。
確かに「特別安くない」、「特別ECで便利ではない」、「ここでしか買えないというわけではない」にも関わらず、大きな売り上げをあげているサイトがあります。そのようなサイトは何をやっているのでしょうか。このようなサイトに共通して言えることは、「ECサイト自体に魅力がある」ということです。「このサイトで買いたい」と思わせる何かが、このようなサイトにはあります。それは何なんでしょうか。

 

ECサイトもメディアである

マクルーハンは「メディアはメッセージである」と言いましたが、ECサイトは店舗であると同時に、メディアでもあります。ECサイトそれ自体にメッセージが含まれています(そういう意味では実店舗も同じですが)。ECサイトでも「ここで買いたい」と思わせることができるのではないでしょうか。
一つヒントになることがあります。北欧、暮らしの道具店を運営するクラシコムさんがWebSig会議でECサイトのメディア化について講演していました。僕は実際に参加したわけではないので、詳しくはわかりませんが、資料を見ると、「メディアとしての魅力を高め」、「最愛のポジションを獲得する」とあります。恐らくこれが、3つの基本戦術が使えない場合の最高の戦術ではないかと思います。
ECサイト上で有益な情報を提供する、魅力的なユーザーの経験を提供するなどして、メディアの価値を高めることで売り上げにも繋げることができます。
ECサイトで有益な情報を提供したところで、ユーザーはそれを見て他の安いサイトで購入するのではないか?という意見もあるでしょう。恐らく当然、それはあります。しかし、「他より多少高くても」ここで買おうという気持ちになることもあります。有益な体験をした「見返り」として、「ここで買う」という行動をとります。心理学では「代償行動」という用語で説明できると思います。代償行動とは、「何らかの目標が達成できない場合、別の類似な方法で代替しようとする行動」です。ECサイトで有益な情報を得て、感謝を示したいという「借り」ができます。その「借り」を返す方法は、直接会って感謝を示すことができない以上、サイト上で買い物をして返そうとします。これで売り上げをあげることができます。
もちろん、全てのECサイトで同じ方法をとることはできないかもしれませんが、この方法であればかなり普遍的に利用できるのではないかと思います。

 

メディアとしてのECサイトを評価する

ECサイトでメディアとしての価値が重要であるならば、それをきちんと計測し、KPIに組み入れていきたいところです。該当ページのPV数・訪問数は「メディアが見られていた」ことの証明となるので、KPIとして必要になります。それに加え、ある程度「ロイヤリティ」や「エンゲージメント」を評価する仕組みが必要になります。これは、ページ内に満足度などの簡易アンケートを設けて評価する、「Facebookのイイね数」や「はてなブックマーク」の数で評価するなどの方法が考えられます。また、1ページ内に多くの情報を詰め込む場合は、ページの「スクロール率」なども評価項目として考えられるでしょう。

 

最愛のポジションを築くために

ECサイトのメディア化が重要なのはわかった。測定方法も考えた。では、最愛のポジションを築くために何をすればいいんでしょうか。それは、サイトごとに違うんだと思います。まずはユーザーをよく知ることから始めるべきです。ユーザーが望んでいること、それは多くの場合、潜在的なものです。ユーザーに聞いても答えてくれません。ユーザーの行動を観察するか、ユーザーとコミュニケーションをとって分かり合うか、の方法で知るしかありません。まずは、ユーザー理解が何よりも重要なんだと思います。
(あえて今回は触れませんでしたが、マイナスの要因を排除することも当然重要です。cwf. FUD